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2017テンカワンツアー振り返りその1

 

 

 

アブラヤシがインドネシアの熱帯雨林を急速に侵食している昨今、まだ何とか踏み留まって祖先から受け継いだ森を守っている共同体を元気づけ、オランウータンやフタバガキ科樹木に象徴されるその豊かな生態系とそれと密接に結びつく彼らの伝統文化を残してもらおうとの思いで企画した最初のテンカワンツアー

 

 

主催はリアックブミ財団(センタルム湖野生生物保護区の環境保全やエコツアーを行う団体)で、代表のヘリ―は10年以上前から採油できる植物であるテンカワンの利用を進めることで、アブラヤシの侵食から西カリマンタンの環境を守ろうと活動している男です。テンカワンネットワーク日本支部の広若は20年前から彼を知っていて、そのお坊ちゃま的優雅さ(豪族の家系で広大な土地を所有!)と誠実さに惚れ何とか彼の思いに応えたいと思っておりました。

 

 

 

今回日本から参加したのは私の友人3人と私が毎年炭やきで遠征している小笠原の野生生物研究会の重鎮夫婦、今年一緒にテンカワンオイルのマーケティング調査をやっている友人とその奥さん、太陽の家ボランティアの田野さんが急遽参加できなくなったためにすでに振り込んだお金を「前途有望な若者を送り出すために使って下さい」と寄付されたお金で参加した東京農工大の男女学生二人、退職したはずがもっと忙しくなっている自然保護団体の代表と私の11人、年齢層は20代前半から70代、職業は学生、一般社会人、会社経営者、施設職員、JICA専門家まで様々でした。

 

 

 

植林の場所は西カリマンタン州ベンカヤン県スルアス郡サハン村。ここは古いテンカワンの森が残っていて、共同体の結束も強いところです。私たちの滞在中この村でいただいたご飯は全てこの村の焼畑で採れたものだけを使い、村の奥さんたちが交代で調理してくれました。テンカワンはその大部分が祖先が植えたもの、またはその植えられたものから落ちた種が成長したもので、それが生育する森ごと共同体全体で守る意識がなければもはや残っていません。もちろん今ではかなり少なくなってしまった天然林にも点在していますが、そこには人間が入っていませんし、その保全は政治的なものになってしまうので日本人の出る幕はないわけです。

 

ちょっと脱線しましたが、つまりテンカワンが残っている村というのは共同体の決まり事をみんながきちんと守る、結束の強いところなのです。今回我々11人とリアックブミスタッフ5人の計16人をムラヤン集落263世帯1139人の代表がもてなしてくれたのですが、大雨の中植林作業の手伝いに100人近く来てくれて、植林作業の翌日も4050人がワイワイと集まって滝までバイクの後ろに乗っけてくれたり、お別れの夜にはまた100人以上が集まって賑やかに盛り上げてくれました。

 

 

ちなみに現在インドネシアでは焼畑は禁止となっています。しかし慣習法が優先するこの国では、その集落の全員が納得していて事前に届け出が出ていれば焼き畑をやってもいいとのこと。次に行ったトホイリル村では森に火がついているのが見つかるとすぐに消化ヘリが飛んで行き、延焼を食い止めていました。

 

実はこの村の結束の強さは村長の人柄も大きいと思われます。というのは今の村長は3か月前の選挙で初当選した人ですが、今年3月まで40年近くここで小学校の先生をしていて、村人たちからとても慕われている様子でした。村長になったばかりなのでまだ腐敗の匂いも全くなく、演説も校長先生のような精神論を中心とした清々しいお話で微笑ましかったです()。朝7時前には役場に来て仕事をしているとのことで、今のジョコウィ大統領を彷彿とさせるものがありました。

 

 

 

このムラヤン集落はインドネシア国内でも有名なところで、2012年にはジャカルタで世界60か国から先住民族が参加した伝統舞踊の大会があり、この集落からも彼女たちの先輩が出場したとのこと。我々の歓迎会兼開会式では彼女たちの踊りが披露され、この地域の文化度の高さにのっけから打ちのめされました。長時間に及ぶ小中学生の彼女たちの踊りはとても洗練されていてよく練習していることに感心しました。

 

 

 

実はこのサハン村、マレーシア国境まで車で30分のところにあります。また、土が肥えていて胡椒やトウモロコシなどがよくできるのでそれを国境まで持って行くと高値で売れるため、普通のインドネシアの農家に比べてお金持ちです。健康志向のマレーシア人には焼畑でできる原種に近い堅いトウモロコシや繊維質の芋が好まれるとのこと。アブラヤシを植えている場所もありますが、彼らの話ではそこは「他のものが育たないから植えてあるだけ」ということで、今のところ大規模にアブラヤシが入って来ることはなさそうです。また、道路が狭いためアブラヤシを積んだトラックが離合できず、我々の滞在中も一台路肩で横転しているトラックがありました。

 

 

 

ここでテンカワン事業のリーダー格となっているのがPak Nadu。インドネシア政府がテンカワンの研究に取り組み始めたこともあって最近この村が急に脚光を浴び、ジャカルタの研究者はもとより、西カリマンタン州の農科大学と共同研究しているフランスの学者や私たちのようなよく分からない外国人まで来るようになりさらにPak Nadu10月には環境林業大臣と会食もしたとのこと!去年一度彼に会っていますが、村人の前で「今や私たちの村は国際的にも注目されるようになった」と話す彼はすごく自信に満ちて別人のようでした。ホスピタリティも旺盛で空いた時間に森に入り、私たちのためにドリアンを採って来てくれたり、日本人参加者の感想を言う時間が長くなって彼らの演目を削らなければならなくなっても我慢してこちらの気持ちを優先してくれたり、配慮が行き届いていて感動💛しました。さて、来年この村はどうなっているのでしょう?